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基礎知識「樹脂切削加工」と「3Dプリンター」の使い分けと選定基準

プラスチックの試作や小ロット部品を製作する際、「樹脂切削加工」と「3Dプリンター(積層造形)」のどちらを選ぶべきか迷うケースは非常に増えています。近年、3Dプリンターの技術向上は目覚ましいものがありますが、製品に求められる「強度」「精度」「外観」によっては、従来の樹脂切削でなければ対応できないケースも多々あります。本記事では、これら2つの工法の違いを徹底比較し、どちらを選定すべきかの明確な基準を解説します。

樹脂切削加工と3Dプリンターの根本的な違い

どちらも金型を使わずにプラスチック製品を作る工法ですが、材料に対するアプローチが真逆です。

樹脂切削加工とは(除去加工)

樹脂切削は、プラスチックの塊(ブロックや丸棒)から、不要な部分を刃物で削り落としていく「除去加工」です。塊から切り出すため、材料が本来持つ強度や耐熱性を100%活かせる点が最大のメリットです。

3Dプリンターとは(付加加工)

3Dプリンターは、スライスされた3Dデータをもとに、樹脂を1層ずつ積み重ねて形を作る「付加加工(積層造形)」です。材料のロスが極めて少なく、刃物が届かないような中空構造や、複雑な幾何学形状でも簡単に作れる点が特徴です。

樹脂切削と3Dプリンターの4項目徹底比較

製品の目的や用途に合わせて正しく使い分けるために、「強度」「精度」「外観」「コスト」の4つの軸で比較します。

1. 強度と耐熱性(材質の信頼性)

  • 樹脂切削(圧勝): 市販されている本物のプラスチック板や丸棒をそのまま削るため、POMやPEEKなど、その材質が持つ本来の強度、耐熱性、耐薬品性を完全に発揮できます。
  • 3Dプリンター(劣る): 積層して形を作るため、層と層の間の接着強度が弱く、特定の方向に力がかかると「割れやすい(異方性)」という弱点があります。また、多くの場合は3Dプリンター専用の疑似樹脂(UV硬化レジンや専用フィラメント)を使用するため、実材質での機能試験には不向きです。

2. 寸法精度と幾何公差

  • 樹脂切削(圧勝): 工作機械による高精度な制御が可能なため、±0.01mm〜±0.05mmといったミクロン単位の精密な寸法出しや、高い真円度・平面度を実現できます。
  • 3Dプリンター(普通): 積層時の熱収縮や、樹脂が固まる際の歪みが発生しやすいため、寸法公差は一般的に±0.1mm〜±0.3mm程度が限界です。ネジ穴やはめ合い部品など、精密な勘合(かんごう)が必要な部分には不向きです。

3. 表面の滑らかさと外観品質

  • 樹脂切削(優れる): 刃物で滑らかに削り出すため、切削直後でも綺麗な仕上がりになります。アクリルなどの透明樹脂を磨いてガラスのように透明にする加工も可能です。
  • 3Dプリンター(劣る): 1層ずつ積み重ねた跡(積層痕)が必ず表面に階段状に残るため、ザラザラとした質感になります。美観を求める場合は、後工程での入念なやすりがけや塗装が必要です。

4. 製作コストと納期(数量ごとの違い)

  • 1個だけの超複雑形状: 3Dプリンターの方が安く、早く作れるケースが多いです。切削のように複雑なプログラミング(CAM)や治具の準備が不要なためです。
  • シンプル・標準的な形状で10個以上: 樹脂切削の方が、1個あたりの加工スピードが早いため、数量が増えるほどトータルコストが安くなります。

どちらを選ぶべき?選定の基準まとめ

比較した特性を踏まえ、どちらの工法を選ぶべきかの具体的な判断基準をまとめました。

樹脂切削加工を選ぶべきケース

  • 実際の製品と同じ材質(実材質)で、引張強度や耐熱性のテストを行いたいとき
  • ネジ穴(タップ加工)や、ベアリングを圧入するような高精度の穴加工が必要なとき
  • 表面が滑らかで、見た目の美しい外観パーツを作りたいとき
  • 同一の部品を10個〜個単位でまとめて製作したいとき

3Dプリンターを選ぶべきケース

  • 内部が網目状(ラティス構造)になっていたり、中空になっていたりする、刃物が届かない複雑形状のとき
  • 精度や強度は二の次で、まずは「形やサイズ感だけを1個作って手元で確認したい」という超初期の試作段階のとき
  • 切削では削り落とす部分(材料ロス)が多くなり、材料費が高騰してしまうとき

まとめ:フェーズと目的に合わせた最適な選定を

「樹脂切削加工」と「3Dプリンター」は、どちらかが優れているというわけではなく、それぞれに得意・不得意があります。

開発の最初期段階で、デザインやサイズ感をクイックに確認したいだけであれば「3Dプリンター」が時間的にもコスト的にも最適です。しかし、実際に組み立てて負荷をかける機能テストや、量産一歩手前の最終試作、あるいはそのまま実機に組み込む部品であれば、強度と精度に優れる「樹脂切削加工」一択となります。

製品の試作フェーズと、その部品に求められる要件(強度・精度・外観)を明確にし、最も費用対効果の高い工法を選定してください。

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